第1回「みんなのクレジット」はなぜ行政処分を受けたのか?

インターネット上で資金を調達したい人(企業)と運用したい人を結びつけるソーシャルレンディングの新興企業「みんなのクレジット」(以下、みんクレ)が3月下旬、金融庁から1か月の業務停止などの業務改善命令を受けました。第1回目は、この事件を考えてみましょう。

金商法違反で業務改善命令

証券等監視委員会がある東京・霞が関の金融庁

ソーシャルレンディング(SL)は、インターネットを通じて金の貸し借りを行う行為です。

従来型の銀行融資が借り手の多様なニーズに応えられなくなり、また低金利になって預ける魅力が薄れた一方、インターネットの隆盛で小口の資金介が簡単に集められるようになったことが登場の背景にあります。

みんクレはなぜ処分を受けたのでしょうか。金融庁によれば、同社は投資家から集めた資金を事前の説明とは異なる融資先に貸し付けていたなどとして、金融商品取引法違反に問われました。その内容は次のとおりです。

(1) Webサイト上では「不動産ローンファンド」や「中小企業支援ローンファンド」などに貸し付けるとうたっておきながら、実際は親会社とそのグループ会社に貸し付けていた。

(2) 投資家への返済原資は融資先の不動産事業で得られた収益を充てると記載されているが、実態は償還前の別のファンドが流用されていた案件があった。

(3) 融資先の担保は不動産や有価証券を設定していると表示していたが、融資先は親会社及びそのグループ会社、担保はそれらの会社が発行した未公開株などであり、担保が設定されていないファンドもあった。

また同社は、代表者である白石伸生社長の個人的な借入金の返済やキャッシュバックのキャンペーンにファンドの資金を充当させていたりするなどの不正行為がありました。

要約すれば、投資勧誘時の説明とは異なる資金運用を行い、資金管理が不適切でずさんだった、ということになります。

このため、3月30日から1か月間の業務停止を含む業務改善命令を受けたのです。みんクレは2015年5月の設立。金融商品取引業と貸金業の2つの金融業免許を持つ登録業者です。

今回の行政処分は、投資の勧誘や資金の運用、貸し付けを行う金融商品取引業者としての違反行為にあたります。

この違反について、金融庁の関係機関である証券等監視委員会が検査を実施した結果、違反事例が見つかり、金融庁に対して同社に行政処分を行うよう勧告しました。

社長の謝罪

業務改善命令に対し、同社は3月30日付で白石伸生社長名による「お詫び及びご報告」と題した文書をサイト上で明らかにしました。長い文章ですので要約します。

(1) ソーシャルレンディング業界は、金融商品取引法と貸金業法の順守が求められているが、融資先の開示に関して前者は開示、後者は非開示で矛盾している。この点について当局と相談しながら2つの法律を順守する方策を考えてきたが、良案がないまま業務拡大してきた。今後は、融資先番号制度を導入するなどして対処していく。

(2) 開業当初は知名度が低かったので、優良な貸出先の開拓は厳しいと判断し、当局の許可を得てグループ会社向けを5割、その他外部向けを5割とする貸出シェアにする予定だった。しかし、営業開始後半年の検査の時点ではグループ会社向けが9割だった。従って、担保も追いつかなかった。現在、この問題は解決している。

(3) 私はこれまで様々な事業を興し、規模を拡大した後に売却してきた。その間、25年間は黒字化するまでは「仮払い」計上で報酬は受け取らなかったが、これを改める。また、資金の適切な分別管理など社内体制が一新された時点で社長を辞任する。

白石社長は、ソーシャルレンディングを業として営む際の2つの法律で、融資先の開示に関して規定が相反している。

また、当局の検査期間は事業が軌道に乗る前のことであると不満を漏らしています。しかし、だからといって、集めた資金の9割をグループ内の企業に貸し付けた行為は情実融資に等しく、投資家への事前説明と乖離している、と言われても仕方がありません。

ソーシャルレンディングの陥穽(落とし穴)

不動産事業は景気に左右されやすい・・・・

SLは一種の投資ですから、銀行預金と比べて金利(利回り)は高くなる傾向があります。しかし、その逆もあります。

みんクレが融資対象(同社から見れば運用先に当たる)と説明している「不動産ローンファンド」は、ビルや土地などの不動産の購入資金に充てられます。

みんクレから融資を受けた企業は、ビルを建てたり取得したりし、店子を募集・入居させて賃料収入を稼ぎ、そこからみんクレに借入金を返済していくことでしょう。

しかし、不況でテナントビルに店子(企業)が入居しなくなると賃料収入は減少し、みんクレから借りていた企業は、資金の返済が延滞または返済困難になるリスクがあります。

そうなると、利回りは銀行預金よりも下がり、最悪の場合、投資した資金は戻ってこなくなり、投資リスクが発生します。

SLやクラウドファンディングなど、インターネットを経由した資金運用(調達)は、数万円単位の小口資金を幅広く集めることに特徴があります。

しかし、この「小口」という点が、メリットでもあり、デメリットでもあります。小口の資金であるがゆえに投資家は予定の利回りに達しなくても、投資を続ける可能性があります。

運営する企業にとっては、まさにここが狙い目です。失敗しても大した額ではないと思わせる感覚が、個人投資家にとってSLやクラウドファンディングの陥穽(落とし穴)とも言えます。

商品の開示内容と運営主体の信用力

ソーシャルレンディング(SL)は新しいタイプの金融サービスで、今後一層の広がりが見込まれます。しかし、注意しなければならないことがあります。ひとつは、情報開示の内容です。

SLは投資を呼び込むために、商品内容(融資先の情報)をできる限り開示しています。

しかし、例えば、なじみの薄い欧州のある地域の、「金融事業者グループに対する個人融資の原資としての貸し付け」と言われてもピンときません。

しかも、中東の島国にある、その金融事業者グループの親会社に貸す仕組みです。聞いたこともない通貨単位です。

為替リスクもあります。誤解を恐れずに言えば、詳しいけれども複雑な商品内容の開示は、投資家に対する適切な情報公開とは言い難いものです。

簡潔明瞭に説明できない金融商品は、リスクを抱えていると考えるべきかもしれません。

もう一つ注意すべき点は、資金仲介する者の信用力です。SLの運営主体は果たして信用できる会社なのか? ということです。

SLの中には、大手商社が出資していたり、上場企業の証券会社の100%子会社として業務を展開しているところもあります。

こうしたSLは、信用力のある運営主体であるといえるでしょう。なぜなら、大手商社や上場会社が自社の信用力に傷がつくような企業行動を子会社(出資先)であるSLに許すはずがないと考えられるからです。

次回は、みんクレの「親会社とそのグループ会社」、白石伸生社長について。ひと昔前、「インターネット貸金業」の相談を受けた、とっておきの逸話もご紹介します。

平木 恭一(ひらき・きょういち)

明治大学文学部卒。金融業界紙元編集長。金融業界の取材歴30年。銀行、ノンバンク(クレジットカード・信販・消費者金融)、ITの取材・執筆に長く携わる。近年は小売、コンビニなどに取材範囲を広げている。

主な近著は「図解入門シリーズ クレジット/ローン業界の動向とカラクリがよ~くわかる本 第4版」(秀和システム 2014 年10 月)、「フジテレビ凋落の全内幕」 (宝島社 2016年9月)、「別冊宝島 資産が危ない! 2017年金融大崩落」(宝島社 2017年1月)など。

Webサイト: https://www.k-hiraki.com

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