第16回 芸能人に見るカネの話①「収入が不安定でも借り換えに成功する秘訣とは?」

お笑いコンビのかつみ・さゆりが先頃、「借金2億円の借り換えに成功した」と話題になりました。

浮き沈みの激しい芸能人に対して、銀行は昔から融資に厳しいと言われてきましたが、時代は変わったのでしょうか。浮草稼業であるタレントの融資を切り口に話をしていきます。

銀行はリスクゼロを念頭に融資するのが原則

相方の不祥事もネタにするのが関西芸人の逞しさ。意味もなく騒がしいこの夫婦漫才がまき散らすカネに絡んだ話の全てが真実、というわけではないでしょう。

「しゃべくり」を生業にする芸人であれば、虚飾入り交えて面白おかしく語ったとしても罪にはなりません。

聞く側も話半分、シャレのひとつと聞き置くのがお約束というものでしょう。とはいえ、現存する地方銀行の名前を挙げてまで借り換えローンの話をするのですから、ある程度は事実かもしれません。

「26年間で2億6000万円の利息を払っていた」という

前置きが長くなりました。さて本題です。2人は「借り換えに成功した」と語っています。ということは、過去に金融機関から融資を受けた実績があるということになります。

当たり前のようですが、ここが大事なポイント。どんな業種でも、一度でも実績があれば、その業界のなかで商売ができるものです。

とりわけ金融機関は、他業態に比べて横並び意識が非常に高い業界。それだけに、同業他社が融資を実行したと聞けば、申し込みをする銀行も、ある程度は信用してくれるものです。

ただし、過去に融資を受けた実績があるとしても、それだけで借り換えが文句なしに通る保証はありません。

融資は、銀行から見れば「いくらならリスクがゼロで返済できるのか」をチェックするのが大原則。

あらかじめリスクを考えて「いくらまでなら貸せるのか」を第一に最大限の融資額を貸す消費者金融とは大きな開きがあります。

銀行にとって、返済能力がすべてです。そこから借り換え残高を見て返済年数、金利などを決めていきます。もちろん万が一の時に備えて、担保になる物件を吟味し、抵当権を設定したり保証人も求めるでしょう。

銀行も苦しいので、借り換えは歓迎する

とはいえ、このお笑いコンビが借りたのは、報道の限りで言えば住宅ローンではなくて事業性ローン。

しかも、オオクワガタの養殖やラーメン店、スイーツ食べ放題店、果ては株や先物に手を出して失敗するなど、芸風以上?に浮草ビジネスを展開してきたようですので、資産と呼べるものはあまり残っていない。

2人は一度は銀行で事業ローンを組んだが金利負担が重荷になり、より低金利のローンに借り換えたいと思うようになりました。

事業で利益が出ずに返済がきつくなったのですから、当然売り上げは落ち込んでいます。そんな人に借り換えをOKする銀行は、常識的に考えても少ないです。

借り換えを考えるとき、最初に借りた時の売り上げ(収入)よりも減っている場合は、厳しいと言わざるを得ません。

ところが、借りたいと考えている人以上に銀行も悩んでいるのです。借り換えというのは、一般的に言えば、今借りているローンの金利よりも低い金利のローンに乗り換えることを指します。金融情勢はゼロ金利時代。

そのうえ、現状を肯定的に見る景気観測が出ているのとは裏腹に、世の中はそれほど活気があるわけではありません。銀行は法人個人ともに融資先が細り、収益が出ていません。

長引くゼロ金利時代(写真は日銀本店)

そこで銀行が目を付けたのが、ローンの借り換えです。

前述したように、一度でも借りたことがある人は、最初から返済不能に陥った人でもない限り、銀行の審査に合格した実績があるのですから、ある程度の信用力を持っているはず。

このお笑いコンビがチマチマした事業(失礼!)に手を出したのは、バブルの好景気に沸き返っていた時代に始まっているようです。

とすれば、「(ローンの金利を)4.725%から1.475%に借り換えさせてくれた」というのは事実でしょう。普通の人から見ると、「売れなくなったらタダの人なのに、2億近くも貸して大丈夫か」と驚くかもしれませんが、銀行からすれば「カモネギ」にも等しい美味しいお客さんのはずです。

銀行は融資先を探すのに懸命。今年問題になった銀行のカードローンも、貸出先に窮した銀行が個人顧客に融資先を拡大したことが背景にあるのです。

それにいま銀行は、単に金を貸すことだけでなく、融資を申し込んだ人と一緒になって事業の将来性を検討する姿勢を金融庁から求められています。

かつみ・さゆりに融資した銀行は、2人がこれまで興してきた事業に対するアドバイスもしたと思われます。

大手興業会社の芸人は一種のサラリーマン

かつみ・さゆりは、「これまで26年間で2億6000万円もの利息を払っていた」が、桂文枝など、所属する吉本興業の先輩の縁を伝って借り換えに成功したといいます。

これは、勤務先の看板と著名落語家の知名度が借り入れの際に保証人の役割を果たしたことを意味します。

彼らは吉本興業という企業に勤めるサラリーマン芸人です。吉本興業は数年前まで上場会社でしたが、現在は非上場なので、芸人との雇用契約がどうなっているのか、細かい企業情報は分かりません。

しかし、桂文枝クラスの大物になれば、一般企業の重役クラスに相当します。また、数年前まで上場会社だった吉本興業の財務基盤は、ある程度銀行は把握しています。

芸能人やプロスポーツ選手は、活躍して巨額のマネーを手にすることもありますが、その期間はおおむね短く、銀行から見れば長期の融資を実行するにはリスクのある個人顧客です。

売れっ子タレントでもキャリアの浅い人が高額な賃貸マンションに住んでいるのは、住宅ローンを申し込んでもなかなか通らないからだとの指摘があります。

人気商売は将来の保証がありません。売れなくなれば返済困難になる人に、銀行がいい顔をするはずがありません。

しかし、業界最大手の企業がバックに付いていれば、銀行はそこに勤める社員に対して一定の信用力を付けます。これは相手が芸人でも、一般の人でも変わりません。

そうは言っても、副業に援助するのか?

かつみ・さゆりは、ゼロ金利という時代の追い風と、所属先や先輩芸人の「保証」によって借り換えに成功した、といえるでしょう。

必ずしも上手くいかなかった数々の事業も、おそらく銀行の助言などで将来性のあるものとそうではないものに切り分けて整理したのではないかと想像できます。

また、収入が不安定とはいっても、業界最大手の興業会社に30年以上在籍していれば、ギャラも相当の額はあるでしょう。

必ずしも不安定ではないでしょうし、会社からは高く信用されているはず。また、会社の信用力は、社員の信用力でもあります。

借金はあっても、ギャラはそれなりにあった?

ただし、社員の副業に対して勤務先企業がどこまで理解を示すのか定かではありません。

常識的に考えれば、サイドビジネスが上手くいかないので金を貸してほしいと泣きついて、スンナリ社内融資に応じてくれるお人よしの会社は少ないでしょう。

まして、吉本は、その芸人たちから一様にケチと文句を言われる会社。援助するにも限度があるでしょう。ではどんな援助をしたのでしょうか? 次回をお楽しみに・・・・。

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