クレジットカード大手各社の現状と課題②~三井住友カード

日々の暮らしに身近なクレジットカードですが、発行しているのはどんな会社なのか、ご存知の方は少ないのではないでしょうか。

我が国に登場して四半世紀が過ぎ、1人3枚は持っているといわれるクレジットカード。

電子マネーの台頭で最近は影が薄くなった印象もあります。カード大手各社の現状と課題を探っていきます。第2回目は三井住友カード。

バリバリの旧住友銀行直系、VISAカードの日本拠点

業界の間ではいまでも「住クレ」で通るのが三井住友カード。

旧住友銀行の100%子会社として1967年に「住友クレジットサービス」として設立。都銀の再編統合で2001年に現社名になり、今年は創立50周年を迎えました。

三井住友カードの本社があるビル

出所:http://www.smbc-card.com/jinji/2019/intern/album/index.html

同社が属している三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)には「SMFGカード&クレジット」という中間持株会社があり、この下にセディナとともにぶら下がる形になっています。

2009年に誕生したセディナは、かつてのスーパー最大手・ダイエーの系列クレジットカード会社だったオーエムシーカード(OMC)、2007年に三菱UFJフィナンシャルグループから離脱した信販会社のセントラルファイナンス、それにSMFG系列で、もとは信用保証会社だった信販業のクオークの3社から構成されています。

SMFGには消費者金融大手で旧プロミスのSMBCコンシューマーファイナンスがあり、他のメガバンクグループと比べて、ノンバンクのラインナップはやや複雑な様相を呈しています。

三井住友カードが知名度を上げたのは、クレジットカードの国際ブランドであるVISAの日本拠点になったからでした。

世界のカード王者VISAを統括する世界的組織「VISAインターナショナル」は、世界の中で唯一マスターカードに遅れを取っていた国である日本の営業強化策として、住クレに白羽の矢を立てます。

1980年にビザ・ジャパン(1983年にVISAジャパン協会に改称)を組織、当時の住クレがこの組織を実質的に支配することになりました。

VISAインターナショナルは国内金融機関の取り込みを図るよう、極東地域におけるブラント発行権をVISAジャパン協会に与えたのです。

同社は文字通り、旧住友銀行の直系カード会社。歴代社長も住友銀行出身者が占めており、銀行では副頭取クラスが就任するポストです。

銀行系のクレジットカード会社は銀行の子会社の中でも最上位の格と見なされているだけに、本体の銀行でナンバー2の座にあった人が後継となることが多いのです。

余談ですが、2010年に破たんした消費者金融最大手・武富士を描いた高杉良氏の「小説・巨大消費者金融」の主人公・大宮紘平は、1970年代に同社の社長だった秋葉節一氏といわれています。

秋葉氏は住友銀行常務から住クレの社長に転じたのち、武富士に移りました。筆者は後年、東京都内で小規模な金融業を営んでいる秋葉氏に会ったことがありますが、噂通りの直言居士でした。

ちなみに現在の社長は旧プロミスの社長も務めた久保健氏(三井住友銀行元副頭取)。銀行では広報部長も経験しているだけに、マスコミの扱いに長けています。

信用金庫業界で会員数を伸ばした

カード会員を増やすには親会社である都銀の力を借りるだけでは限界があります。そこで地銀などの地域金融機関と提携して会員を広げるフランチャイズ(FC)化がどうしても必要になります。

ところが親会社の住友銀行は三菱銀行(いずれも当時)と違って友好地銀が少なく、FC化する相手先が足りませんでした。

そこで住クレが運営するVISAジャパン協会はフランチャイジーの相手を、まだクレジットカード事業になじみがなかった信用金庫に目を付けます。

信金業界は、ひとつひとつの信金は規模が小さいのでコンピュータシステム経費を低く抑えるため、全国をいくつかの地域ブロックに分けて業務システムを構築するなど、結束力が強いことで知られています。

VISAジャパン協会は地区ごとにカード会社を作り、そこに地域の信金を取り込めば一網打尽に会員が増えると考えました。

「しんきんVISA」を6つの地区に設立し、個別の信金が加盟できる仕組みを作ったのです。

2017年3月現在、260余りの信金の実に8割以上が加盟するVISAカードの大票田になっています。

屈辱の名称変更の裏に「銀聯」あり?

こうして三井住友カードは、住クレ時代から今日まで堅調に会員・加盟店を増やし、業界最大手の一角としての地位を長く維持、我が国におけるVISAカードの総元締めとしてVISAジャパン協会を統括し運営してきました。

しかし2005年あたりから旗色が変わってきます。

そのひとつが中国のクレジットカード・銀聯(ユニオンペイ)の登場です。2002年に国家の強力な支援を受けて設立された銀聯は、スタート当初から急速に勢力を広げました。VISAジャパン協会はこのとき、本家のVISAインターナショナルを差し置いて日本への進出を盛んに促し、中国国内で銀聯のカード事業を陰で支えてきた本家の面子をつぶして不興を買ったといわれています。

「銀聯との提携は熾烈を極め、ライバルのJCBなどに後れを取るまいとVISAジャパン協会は必死だった。そうしたオーバープレゼンスが引き金になり、VISA総本部が『VISAの冠は使わせない』と激怒し、協会の名称変更に発展した」(カード業界関係者)といわれています。

VISAジャパン協会は2006年、突如として「VJAグループ」と改称します。組織の中身は全く変わっていないのに名称は頭文字を3つ並べただけ、というのはいかにも唐突で屈辱的でした。当時業界では揣摩臆測が飛び交いましたが、VJAは現在に至るまでその名称変更の経緯を具体的に説明していません。

VJAのロゴマークと会員数・売上高

出所:VJAグループのWebサイトより一部抜粋
http://www.vja.gr.jp/vja_about/organization.html

銀行離れを進めてドコモと提携

もうひとつは、2005年のNTTドコモとの資本業務提携です。

メガバンク関係者によると、三井住友銀行の西川善文頭取(当時)は、「カード子会社は、いつまでも本体の銀行に寄りかからず、経営体質を改める時期に来ている。いい相手がいれば資本提携を検討すべきではないか」などと語ったといわれています。

ドコモが1000億円を出資し三井住友カードと提携したのは西川氏が辞任した直後。

この親離れ発言は「ドン」と恐れられた西川頭取の置き土産かもしれませんが、ドコモは同社の34%の株式を保有する大株主になり、三井住友カードが銀行主導から一本立ちへの足掛かりを築く端緒になりました。

また、この提携を境に同社は銀聯、「おさいふケータイ」をはじめとする携帯端末の新たな決済サービスの2大ビジネスに大きく舵を切ることになるのです。

2005年にNTTドコモと提携した同社は、ドコモが開発した携帯電話の決済端末「ⅰD」を搭載した「三井住友カードⅰD」の取り扱いを開始。

日本のクレジットカード会社として初めて銀聯と提携したのも、この年。まだこのころは訪日外国人の「爆買い」は表面化していませんでした。

しかし、この業務提携で獲得した5年間の先行メリットは大きく、国内の大手家電量販などを銀聯の加盟店として優先的に獲得できました。

2013年には「iD」、銀聯に続く新たな決済手段として、スマホ端末決済に乗り出します。

米国スクエア社が開発した携帯端末の決済システムで、スマホやタブレット端末にスクエア社が開発した小型のカード読み取り機があれば、従来の信用端末が不要になります。

スクエアを活用したスマホ決済は、クレジットカード会社の重要なビジネスである加盟店獲得に威力を発揮します。

事業の立ち上げから4年が経過し、その成果は必ずしも十分ではないようですが、スマホの爆発的な普及と、小型でアプリをダウンロードするだけの簡便さを持つ信用端末は加盟店掘り起こしの武器になります。

カギは銀聯とスマホ決済

三井住友カードの今後の戦略のカギは銀聯とスマホ決済が握っています。

スクエアはこれからの事業ですが、2013年を境に顕在化した爆買いによって銀聯との提携は予想以上の成果を上げているといえます。

銀聯カードはデビットカードで、国外の現金持ち出しが制限されている中国の富裕層にとっては、日本国内での利用率が高いといわれています。

いまや全世界で50億枚ともいわれ、世界一のカードに成長した銀聯は、2020年の東京五輪開催で訪日外国人の増加が見込まれるだけに、日本国内での利用増加に拍車がかかることでしょう。

スマホなど携帯端末での決済でも力を発揮しています。2005年のドコモとの提携が背中を押した感がありますが、2016年10月から我が国でスタートした「アップルペイ」にも対応するなど、電子マネーへの感応度は高いものがあります。

携帯端末での決済や電子マネーの普及で、クレジットカード業界はいまやクレジット機能の役割が低下しつつあります。

一方、ひと昔前は死に体だったデビットカードが息を吹き返し、キャッシュレス化が進展しています。

また、爆買いによるインバウンド需要の高まりで、デビットカードの代表格である銀聯の存在感が増しています。

三井住友カードにとっては良いことづくめのようですが、デビットカードの隆盛は、クレジットカードの衰退にもつながりかねません。

この流れは承知の上で、スマホ決済や電子マネーに特化しているのかもしれません。

2016年10月から取り扱いを始めた「SMBCデビット」は、三井住友銀行との共同発行ですが、三井住友カードがカード発行会社になっています。

クレジット機能のないカードをクレジットカード会社が主体的にサービスを提供する。

自己否定にも思えますが、これまでは想定外だったクレジット嫌いの顧客層を取り込むことができるか注目されています。

三井住友カードの会員数と取扱高の推移

出所:三井住友カードWebサイト「業績データ」から一部抜粋
https://www.smbc-card.com/company/info/data.jsp

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする