クレジットカード大手各社の現状と課題①~JCB

日々の暮らしに身近なクレジットカードですが、発行しているのはどんな会社なのか、ご存知の方は少ないのではないでしょうか。

我が国に登場して四半世紀が過ぎ、1人3枚は持っているといわれるクレジットカード。電子マネーの台頭で最近は影が薄くなった印象もあります。

カード大手各社の現状と課題を探っていきます。第1回目はジェーシービー。

旧三和銀行系、歴代社長も

我が国のクレジットカード会社は当初、複数の都市銀行が共同出資してできた企業がほとんどでした。

「都銀各行はクレジット業務をカード発行方式にするのかクーポン(切り取り型の回数券のような冊子)方式にするのか頭を悩ませるなど、クレジットカードの将来性に確信が持てなかったので、各行が資金を持ち寄って見切り発車した。

収益が上がらなければ早期に撤退できるようにするため、より少ない資金で済む共同出資の形にした」(大手銀行関係者)といわれています。

とはいえ、クレジットカードは、立て替え払いという性質上、豊富な資金力が求められました。都銀の再編統合で消えた会社もありますが、例えばUCカードは第一勧業銀行、富士銀行(いずれも現・みずほ銀行)など都銀6行が出資しており、JCBも三和のほか太陽神戸銀行(現・三井住友銀行)、りそな銀行などが大株主でした。

カードや信販、消費者金融などのノンバンクは、大銀行から資金を引っ張ってきて大衆に貸し付ける、いわば「借りて貸す」又貸しの世界。都銀がくしゃみをすれば、ノンバンクはたちどころに風邪を引くのです。

ジェーシービー(JCB)は1961年に設立されました。三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)が日本信販(現・三菱UFJニコス)に信販業務のノウハウを伝授してもらい、その後に業務を開始しました。

JCBは三和銀がUFJ銀行となり、2006年に東京三菱銀行と合併して三菱東京UFJ銀行になった以降も、旧三和銀出身の副頭取が歴代社長を務める、典型的な「三和天下りポスト」です。

社内では生え抜き社長待望論もあるようですが、現実味は薄いでしょう。半世紀以上を経過したJCBの組織の中で社長の適任者に事欠くとは思えませんが、都銀とのパイプを寸断してノンバンクは生き残れません。

銀行口座の引き落としがなければカードはただのプラスチック。民族主義だけでは業容は拡大できないのです。

JCB本社

海外戦略では厳しい競争に喘ぐ

JCBは旧三和銀行の出身者が多く占めていて、三和の別動隊といわれましたが、業績を拡大するにつれて独立心が旺盛になっていきました。

しかし三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)という金融帝国がチラつく立ち位置のため、その戦略には変化が見えてきました。そのひとつが、長年の懸案である海外展開です。

1981年に香港に現地法人を設立し、我が国で初めてクレジットカードの国際化に乗り出しました。

JCBのような銀行系クレジットカード会社の場合、銀行がその店舗網と営業力を駆使して加盟店を獲得し、銀行の顧客にカード加入を勧誘します。

ですから、国内では黙っていても加盟店と会員は増え続けます。

しかし海外では、そうは行きません。VISAやマスターカードの2強が世界中で覇権争いを演じており、国内では大手でも、外に出れば井の中の蛙。

VISAやマスターはカードの「ブランド」を売っています。

彼らは世界の銀行と提携し、その銀行が発行主体になってカード会員を増やします。ところがJCBはカードのブランド会社でありカード発行会社でもあります。

ステッカーを加盟店に貼るのも、カードの偽造や盗難に対応するのもJCB。現地の銀行と提携して展開するとしても、これを世界中でやるとすれば気の遠くなるような労力がかかります。

クレジットカードは、機能がみな同じですから、勝負の分かれ目はブランドイメージになります。既存の強力なブランドを島国ニッポンのカードが挑むにも限界があります。

世界のカードブランドシェアは、VISAが6割、マスターが3割。残り1割の大半をアメックスが占めるなど米国3社の寡占状態が続いており、JCBの世界シェアは2%程度と見られています。

ある専門誌の調査によれば、クレジットカードの国際ブランドの会員数は2015年末の時点でVISAが25億枚、マスター15億枚に対し、JCB(2016年3月期)は9500万枚と、ケタが2つも違います。

太刀打ちできる規模ではないのですが、それでもJCBは根を上げずに奮闘してきました。

しかしそれも限界。スケールメリットの追求は休止状態にあり、「JCBカードは海外で加盟店が少なく、使いづらい」という評価に甘んじてきました。

「爆買い」で追い風吹く

ところが、ここ数年は状況が変わってきました。爆買いです。

中国などアジア各国からやってくる観光客が近年急速に増加、訪日すれば日本国内で恩典が付く日本のクレジットカード人気が高まってきました。

JCBカードは、訪日外国人に対して東京タワーの展望台入場券がもらえるなどのサービスを始めています。こうした日本国内での滞在サービスに魅力を感じる爆買い層が、母国でJCB会員になるという追い風が吹いているのです。

その結果、2016年3月期の海外発行枚数は2185万枚、国内外の会員総数の20%強が海外会員と躍進しました。

出所:「JCBの海外戦略」より抜粋

これまで、漠然と世界を目指していたJCBですが、ここにきてアジア傾斜を鮮明にしています。

海外の重点地域を中国、韓国、台湾、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、ブラジル、インドの10カ国に指定するなど、国際戦略は完全にアジア志向になりました。

MUFGの経営戦略にリンク

JCBの海外戦略は、MUFGのアジア戦略とリンクしているように見えます。

JCBは前述のように複数の都銀の出資を受けた経緯があるだけに、MUFGの系列ではありませんが、旧三和銀が吸収された以上、MUFGの経営戦略の影響を受けないわけにはいきません。

ここ数年のMUFGの業績は海外の銀行子会社の好調に支えられています。

アジア地域では2013年にタイの大手銀行・アユタヤ銀行を買収、同行は「アジアを代表する金融グループ」を標榜するMUFGのシンボルになっています。

JCBの国際戦略がMUFGのアジア傾斜に触発されないはずはありません。そこに、外国人観光客の急増という望外の追い風が吹きこんできたのでした。

JCBは2016年8月にミャンマーの商業銀行および決済サービス会社と提携し、クレジットカードの発行を開始しました。

同年9月にはインドネシアの大手銀行と組んで翌年から同国内でのカード発行を開始しました。

矢継ぎ早のカード発行は、「2017年3月期での海外のカード枚数目標を3千万枚とする狙い」(カード業界関係者)と見られています。

インドネシアの銀行との提携カード

アジア各国の金融インフラはまだまだ整備が遅れています。カード業務は銀行の固有業務で、我が国のようなノンバンク業界は基本的に存在しません。

また、カード発行に不可欠な個人信用情報を統括する機関が発達しておらず、後払いのクレジットカードではなく、銀行口座で決済するデビットカードやプリペイド型のカードが主流です。

中国で生まれ、いまや会員数で推定50億枚以上とカード世界一を誇る銀聯(ユニオンペイ)がデビットカードという事実が、クレジットカードの後進地域であることを物語っています。

このため、JCBがアジア各国でクレジットカードを発行するには、その国の有力銀行と提携するところから始まります。

そこでは、アジアでのカード戦略で世界有数の銀行グループMUFGの金看板がモノをいうことでしょう。漫然と「世界」を目指すのではなく、手の届くところに照準を合わせる。

JCBはようやく、身の丈に合った現実路線を取り始めたようです。

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