銀行が好む消費者ローンの顧客像とは?

貸金業法の施行で、消費者ローンの上限金利は銀行、貸金業者とも一律になりました。クレジットカード・信販・消費者金融のノンバンクで借りても銀行で借りても、同じ程度の金利で融資を受けることになります。

しかし、銀行は貸金業法の適用外。どんな顧客を獲得しようとしているのでしょうか。

顧客層は違うと銀行は言うが・・・

いま、銀行カードローンを巡る議論が盛んになっています。全国銀行協会の平野信行会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)は6月の会長会見で、「統計的に言えば、消費者金融と銀行では、顧客層が異なる」と語っています。

銀行でカードローンを借りている人たちは、消費者金融で借りている人に比べて所得が高い、とほのめかしているように聞こえます。

仮にそうだとすると、銀行は消費者金融で借りている人たちよりも年収が多い人たちを中心に貸している、ということになります。

国税庁が2年前に公表した「民間給与実態統計」によれば、国民の平均年収は414万円。正規雇用で473万円、非正規で168万円です。男女別では男性が511万円、女性が272万円でした。

消費者金融業界首位で、三菱UFJ・FGの関連会社であるアコムの決算データ(2017年3月期)に「顧客年収別件数構成比」というのがあります。

200万円から500万円、700万円、1000万円で年収を区切り、何件の借入先があるのかを調べた数字です。

それによると、年収200万円以上500万円以下で2件から5件の借入先がある人が最も多く、新規借り入れでは64.7%、既存顧客でも59.8%(初回貸付の単価は15万4000円)になっています。

このことから消費者金融で主に借りる人は、年収200万円以上500万円以下の階層が多い、と言えるでしょう。

一方、銀行は消費者金融の顧客層とは年収が違う、ということが本当だとすれば、銀行カードローンの顧客の年収は、平均年収を勘案して少なくとも500万円以上という計算にもなります。

しかし、その階層を中心に貸し付けて消費者金融を凌ぐほど残高が伸びる、というのは、にわかには信じられません。

銀行の顧客層も、消費者金融で借り入れが多い年収200万円以上500万円の階層で、顧客の争奪が起きているのではないでしょうか。

業態による差はない、地域差である

消費者ローンの審査は、利用者の属性と、その人の信用情報の2本立てで行うのが普通です。属性とは、年齢、年収、勤務先および勤続年数、持ち家の有無など。

信用情報は、借り入れ件数や返済履歴、延滞履歴などです。信用情報は、個人信用情報機関(全銀協の個人信用情報センターやCIC、JIC=日本信用情報機構など)からデータを入手して審査の参考にします。

働き盛りで勤続年数が多く、持ち家がある人は、銀行でも消費者金融でも歓迎されます。

銀行の場合、自分の銀行に口座がある人ならば、預金や融資などある程度の個人信用情報が蓄積しています。

しかし、口座の有無は審査にあまり影響がないでしょう。むしろ、カードローンを突破口に新規口座を獲得するほうが銀行にとって一挙両得になりますから、属性や信用情報の上で同じ信用力があるなら、付き合いのない人のほうが審査に有利かもしれません。

メガバンクや地方銀行など、業態によって審査基準は異なるでしょうか。大銀行はリスクを回避するために、比較的年収の多い人に貸し、信用金庫など中小金融機関は、メガバンクとの競争の中で年収の少ない人にも無理をして貸す傾向があるかもしれません。しかし、審査の方法はおおむね同じです。

違うのは、地域による年収格差でしょう。

消費者金融大手のプロミス(現SMBCコンシューマーファイナンス)はかつて、ある審査基準を公開していました。顧客の信用力は32×11×5=1760通りある、というのです。

「32」は、前述したように利用者の属性を細分化し掛け合わせたもの。「11」は支社の数。「5」は業界大手で組織していた消費者金融連絡会(武富士・アコム・プロミス・アイフル・レイク)で、「連絡会のなかでの1社あたり借り入れ件数は最大4件まで」というルール。借入先の件数が0件から4件まで5通り、ということです。

これを掛け合わせれば、すべての借り入れ申し込み者は1760の箱に入ってしまう、という理屈でした。

何が言いたいかというと、この「11」です。北海道から九州・沖縄まで、プロミスは11支社を設置して地区ブロックで営業を展開していました。

審査基準のなかにブロックごとの地域特性を盛り込み、審査の精度を維持しようとしていたのです。

銀行カードローンも同様に、メガバンクと地方銀行の違いがあるのではなく、支店のある地域の経済事情、住民の所得レベルによって審査基準を設定していると推察します。

もちろん、地銀などの地域金融機関は同一県内、同一地域で営業していますから、地域差はあまりないですが、地方銀行ごとには異なるでしょう。

都市型の地銀と、そうではない地方の地銀とでは県民の年収レベルも勤務先も異なります。メガバンクも都心部の支店と地方都市の支店では、所得格差があるのでカードローンの融資限度額は、同じ銀行でも異なると思われます。

いくらまで貸すか、いくらなら過剰融資か

消費者金融でも銀行でも「理想の客」は、多く借りてすぐに返す人でしょう。しかし、すぐに返せるなら、そもそも借りません。

かつての業者法である「貸金業規制法」では、源泉徴収票など所得証明書類の提出が不要で、簡易な審査による貸付の場合、上限額を50万円もしくは年収の10%と定めていました。

これは自動契約機が登場し、インターネットが普及して申し込みが簡素化された後でも、業界では守られていました。

貸金業法では年収の3分の一という融資上限を定めた総量規制ができ、消費者金融は残高が伸び悩む原因にもなっています。

銀行にはこの縛りがないので、基本的にはいくら貸しても自由という状態になっています。

しかし、そこは貸し倒れを嫌う金融機関。ノンバンクの信用保証を付けているとはいっても、無制限には貸しません。

ではどのくらい貸しているかといえば、これはブラックボックスで、窺い知ることはできません。銀行は経営情報の開示を厳しく求められる企業ですが、融資の実態は非公開です。

預金と同様、融資も金利は自由に設定できるからで、その金利設定を明かすことは、利益の構造を公開するに等しいからです。

消費者金融では、貸金業法ができる以前まで、大手の場合では同業他社との借入先を含めて3件以内に抑えることを目安にしていました。

そして、他社借り入れを含めた1人当たりの借入残高は50万円以内、一部大手は100万円まで貸していました。

銀行と消費者金融を同列には置けませんが、銀行でも大きな開きはないでしょう。消費者金融の場合では、

この総枠は年収200万円超から500万円以下の階層が中心ですから、銀行の顧客は年収が多いとなれば、70万円から150万円あたりまでが借入の総額かもしれません。

そして、150万円を超えると過剰融資の危険水域になると思われます。銀行で借りる人の年収が国民の平均だとすれば、150万円は正規雇用の平均年収470万円で見れば年収比率は31%。

年収の3分の一、という銀行が適用を免れている貸金業法の総量規制と、ほぼ重なります。国民全体の平均年収414万円で計算すれば36%とやや過剰融資気味となり、非正規社員の平均年収168万円で勘定すると89.2%となって、明らかな過剰融資になります。

かつての消費者金融のように、「簡易審査は50万円もしくは年収の10%」を融資の上限枠としているならば、決して過剰な貸し付けとは言えません。

過剰融資に注意を払っているという銀行の主張が正しいとすれば、年収470万円の人に最大150万円を貸している、というのがモデルケースではないでしょうか。

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