銀行はなぜ、消費者ローンにのめり込むのか?

いまでこそ、銀行はクレジットカード社や消費者金融などノンバンクをしのぐ勢いでカードローンを推進していますが、かつては個人に無担保無保証でお金を貸すということはありませんでした。

ではなぜ、銀行は個人向けの消費者ローンに力を入れるようになったのでしょうか。

回収が嫌で尻すぼみになった銀行カードローン

銀行カードローンは、関西系の都市銀行である三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)が1970年代中盤に始めたのが最初といわれています。

三和銀は当時、三菱・三井・住友など財閥系の都銀に比べると法人融資部門で劣勢に立たされており、個人分野での業務展開に活路を見出していた銀行でした。

高度成長期を経て国民の所得が増加し、消費意欲が旺盛になった80年代に入ると、都銀だけでなく地方銀行なども自行の預金者などにカードローンを販売し始めました。

しかし、どの銀行も実績を上げることはできませんでした。その理由は、回収にあります。

融資は、貸したお金に金利を付けて返してもらう業務です。約束した期限までに返済してくれなければ銀行の仕事は滞ります。

そうなると、貸した金を返してもらうため顧客に電話で返済を催促したり、自宅に訪問して集金したりすることになります。

しかし、借りた人の多くは銀行の預金者でもあり、なかなか催促しづらい面がありました。地銀の支店長経験者は、こう振り返ります。

催促の電話をすると、

『お前のところに預金しているんだぞ。ちょっと待ってくれというのが信じられないのかっ!』

『預金するときはペコペコして、少しばかり借りれば矢の催促かっ!』などと怒られます。

こんな風だから、支店の営業担当は皆、回収や督促を嫌がる。

『支店長、勘弁してください、こんなことしていたら預金も減ります』

と泣きを入れる行員ばかり。

そのうち、ローン残高のノルマも守れなくなり、銀行全体でカードローンの推進が鈍っていきました

昔もノンバンクの保証は付いていた

銀行は、カードローンにノンバンクの信用保証を付けて儲けている、との批判がありますが、これは今に始まったことではありません。

銀行員が回収を嫌がって尻込みしていた昔も、ノンバンクの保証は付いていたのです。

銀行カードローンは、利息制限法の関係から上限金利は20%。80年代に登場したカードローンは金利10~15%。そのうち保証料が別途1~2%程度かかっていました。

保証を担うのは自行系の保証会社や都道府県の保証協会。ノンバンクでは当時、消費者金融会社の保証はほとんどなく、信販やクレジットカード会社が大半でした。

この程度の保証料では、請け負うノンバンクにとっても商売のうま味はなく、焦げ付いた時の弁償もできません。

そうなると、銀行は返済困難になって不良債権を作るわけにもいかないので、カードローンの審査は厳しくなり、利用者が増えなかったのです。

都銀と消費者金融の接近が銀行カードローン復権の道筋をつけた

90年代は、不良債権処理に追われていたこともあり、銀行はカードローン業務に熱心ではありませんでした。

しかし、93年にアコムが初の無人契約機「むじんくん」を設置して以降、消費者金融が空前の利益を上げ、大手各社が株式上場し経済団体に加盟するなどして市民権を得た90年代末から2000年代前半にかけて、都銀と大手消費者金融が次々に接触を図り、資本業務提携を結んでいきました。

消費者金融業界が史上最高の利益を更新し続けるのを横目で見ながら、消費者ローンの高収益に魅力を感じ始めました。

こうした流れが銀行カードローンの復権に道を拓いたといえるでしょう。ただし、大手銀行は消費者金融の経営実態を把握していたわけではありませんでした。

99年ごろ、都銀の広報担当者とこんな話をしました。

消費者金融大手の貸倒率はどのくらいあると思うかと質問したのです。そのころ大手4社の平均は2%程度でしたが、広報マンは「10%は下らないのではないか」と答えたのです。

利益は上げているが、焦げ付きも多いのが消費者金融、という固定観念があったのでしょう。その後、三和銀行やさくら銀行(現・三井住友銀行)、三菱東京UFJ銀行が続々と消費者金融大手と手を結び、将来の本格的なカードローン推進への布石を打っていき、現在のようなカードローンの推進体制が出来上がっていたのです。

もちろん、銀行がカードローンに血道を上げる最大の要因は、法人融資の伸び悩みにあります。

企業融資は担保付きで焦げ付き率も低く、銀行業務の王道とされています。一方、個人向け消費者ローンは事務処理が煩雑で手間もかかります。

しかし、事務処理の大半をノンバンクに丸投げし手数料を払ってもなお、収益が上がるビジネス。逃す手はありません。

銀行にもリスクはある

ノンバンクに何もかもお任せで、銀行は何ひとつ苦労しない、ということはありません。審査などはノンバンクにお任せでも、焦げ付いた場合に備えて貸倒引当金(融資額の1%程度)を準備する必要があります。

カードローンにかかる経費でいえば、ノンバンクに支払う保証料は、ローンを申し込んだ人の返済能力によって変わるので一概に言えませんが、これまで消費者金融業界を取材してきた経験から言えば平均して5%、最大8%程度と思われます。

人件費などの販売管理費を一般的な数値である(商品価格の)30%と仮定すれば、金利14%のカードローンで約4%。

カードローンのコストは1%(貸倒引当金)+5%~8%(保証料)+4%(販売管理費)=10%~13%ということになり、14%のカードローンで得る利益は14-%-(10%~13%)=1%~4%になります。

ゼロ金利の現在、企業融資さらには住宅ローンでも1%以下が当たり前で、利ザヤが1%~4%というのは、ボロ儲けといっていい数字。

このビジネス環境で、これ以上の収益が望める商売はありません。銀行がカードローンにのめりこむのは、まさにこの高い利益があるからです。

しかし、安易な審査を行って過剰融資した結果、不良債権化すれば、貸倒引当金は余分に準備しなければならなくなり、保証料はリスクに応じて高くなります。

そうなると、「利ザヤ1%~4%」は確保できなくなります。

こうした商品自体が持つリスクのほかに、最大のリスクは、今回の一連の報道などで表面化したレピュテーション(評判)リスクではないでしょうか。

銀行が高利で貸金業をやっている、貸金業法で規制されている消費者金融以上に熱心にローンを推進している、といったネガティブニュースこそ、銀行カードローンの販売リスクと言えるでしょう。

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