日弁連はなぜ、銀行の過剰融資を指摘したのか?

総量規制に関するニュースが増えています。

日本貸金業協会は6月14日、年次総会後の記者会見で山下一会長が「年収の3分の一以上の融資を禁じた貸金業法の総量規制は見直すべきだ」などと発言しました。

貸金業界のトップが貸金業法の改正を公式の場で言及するのはこれが初めて。法律施行10年を機に、改正の機運が盛り上がる可能性も出てきました。

こうした議論の高まりは、昨年9月に日本弁護士連合会が公表し、金融庁や全国銀行協会に提出した「銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書」(以下、「意見書」)が発端になっています。日弁連はなぜ、このような意見書を出したのでしょうか。意見書を読み解きます。

ノンバンクの保証付きカードローンが自己破産の下げ止まりを生んでいた

「意見書」は、タイトルどおり、銀行に対して過剰融資をしないよう求めた声明文です。

銀行が過剰融資をしていると日弁連が判断した背景には、自己破産件数の下げ止まり傾向がある、減り方が鈍っている現実があるというのです。

2015年は前年比97%、2016年5月現在では前年比101%と減少傾向に陰りが見えている、今後は自己破産件数が増加する可能性を示唆しているわけです。

日弁連はこの下げ止まり原因を、増加している銀行のカードローンのせいではないかと判断。独自調査の結果を明らかにします。

「2014年破産事件及び個人再生事件記録調査」によれば、自己破産した人がどこから借りているかを調べると、2008年と2014年を比較した場合、貸金業者は減っているのに、民間金融機関や保証会社は増加していると主張します(図参照)。

個人再生は、借金を減らしてもらい長期で返済してもらうことですが、個人再生事件でも同様の傾向が出ています。

過大広告が助長 金融庁方針厳守を指摘

意見書では、「総量規制の対象外」「所得(年収)証明が不要」「専業主婦でもOK」など、銀行カードローンの過大な広告などが利用者に過剰な借り入れをもたらしているのではないかと懸念を表明。

同時に、銀行のこうした融資スタンスは、貸金業法でうたわれた多重債務の発生抑制と、利用者保護の観点から金融庁が示した「消費者向け貸付での留意事項」にそぐわないものだと批判しています。

今年4月、日弁連が懸念したような結果が最高裁の統計で明らかになります。最高裁によれば、2016年の個人の自己破産申請件数は、前年比1.2%増の64,637件。

03年の約24万件をピークに減り続けていましたが、13年ぶりに増えました。

個人の破産申請は、1990年代後半に急増し、03年に24万2千件まで達して以降は、04年から15年まで12年連続して減少していました。

自己破産者が急増すれば、弁護士業界が儲かるのになぜ?

自己破産の申請業務や債務整理は弁護士の固有業務。自己破産者が増えれば、儲かる弁護士は増えるでしょう。

それなのに、銀行カードローンの過剰融資をやめさせて自己破産者が減るようなことを、なぜ日弁連はするのでしょうか? 意地の悪い質問を法曹業界に詳しいA氏に取材しました。

「銀行カードローンの問題は、やはり正義感が背景にある」と、A氏は説明します。

消費者金融業界の過剰貸付と苛酷な取り立てをやめさせるという観点から、日弁連には貸金業法制定に尽力し、総量規制を盛り込むことに奔走した弁護士たちが、現在もなお多重債務防止や自己破産の減少に取り組んでいるからです。

日本弁護士連合会は各地に支部を持ち、東京・霞が関にある弁護士会館に本部を置く法曹業界の総本山です。我が国の弁護士は、必ず日弁連に所属する会員でなければなりません。

また弁護士の活動は国などの権力など何人からも侵害されない「弁護士自治」を保証されている、強大な自治機関です。

「日弁連の本部事務局や消費者問題特別委員会の委員のほとんどは、いわば筋金入りの左翼活動家が多く、弁護士業界の政治団体である日本弁護士政治連盟も『企業が市民を犠牲にして収益を上げるのはけしからん』と考えている人が多いのは間違いありません。

この人たちは、多重債務や自己破産の問題が弁護士の利益になるなどとは考えておらず、人助けと捉えています。過払いを扱う弁護士の収益主義とは対極にあると思います」(A氏)

もちろん、物事には必ず二面性があります。社会の不正義に立ち向かい、弱者の味方を貫く弁護士がいる一方で、自ら社会の悪に手を染めて堕落する人もいます。これは法曹業界に限ったことではないでしょう。

以前、多重債務問題に関して熱心に活動している、高名な弁護士に貸金業法ができる前の2003年ごろに取材したことがあります。

その人は、「必要なときに個人がお金を借りられるカードローンは必要であり、規制の対象とすべきでない」と話していました。

消費者金融の「3悪」(高金利・過剰融資・過剰取り立て)は是正すべきだが、本当に生活に困っている人の安全弁になっていることは、残念ながら事実だからというのです。

一方、口では消費者ローン規制をすべきといいながら、その恩恵にあずかろうとして他の圧倒的多数の弁護士から批判にさらされている弁護士もいます。

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